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2025/02/27

家づくり学

坪庭とは?メリット・デメリットと歴史を知る。小さな庭が家族の心をつなぐ理由-坪庭で家族を想うー

坪庭とは?メリット・デメリットと歴史を知る。小さな庭が家族の心をつなぐ理由-坪庭で家族を想うー

松戸市、市川市、宮大工が手掛ける古民家再生・注文住宅の工匠、広報担当です。
 

皆様こんにちは。

坪庭と聞くとどんな空間が思い浮かびますか? 

坪庭(つぼにわ)とは、部屋や廊下に挟まれるように造られる小さな庭のことです。ご自宅にある方や知人宅で見かけた方、あるいは温泉旅館や料亭、お茶席の露地(ろじ)などで目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

注文住宅の新築や古民家再生のリノベーションにおいて、いま「坪庭」が改めて注目を集めています。なぜ、限られた敷地の中にあえて小さな庭を造るのでしょうか?

本記事では、平安時代まで遡る坪庭の歴史的ルーツから、現代の暮らしにもたらす採光・通風のメリット、気になる建築コストやメンテナンスなどのデメリットまで、松戸市・市川市で宮大工の技を活かした家づくりを行う「工匠」の広報担当視点で分かりやすく解説します。
 


≪目次≫

 

○現代の住まいに活きる「坪庭」の定義

○坪庭のルーツと歴史

○京の町家における坪庭の実用的な役割


○家が明るくなる!坪庭を設置する5つのメリット

 1、室内が明るくなり、開放感が生まれる
 2、家全体の通気性がアップする
 3、プライバシーを守りながら自然を味わえる
 4、非日常の癒やし空間を演出できる
 5、家族とのコミュニケーションが増える
 

○後悔しないために知っておきたい「坪庭」のデメリット

 ・建築費用(初期コスト)が高くなりやすい
 ・断熱性への対策と窓掃除の手間
 ・1階・2階の床面積が狭くなる
 ・適切なメンテナンスが必要になる
 

○まとめ:坪庭がつなぐ家族の心と住まいの未来
 

  

現代の住まいに活きる「坪庭」の定義

現代の住まいにおける「坪庭」とは、建物や廊下、垣根などに囲まれた小さな屋外空間を指します。

いわゆる一般的な「中庭」よりもコンパクトで、多目的に使用するというよりは、樹木を植えたり石を配置したりして**「家の中から季節や自然を感じて鑑賞すること」を主な目的**としてつくられます。

その原型は、京都の伝統的な街並みに見られる「京の町家」にあります。間口が狭く奥行きが長い建物の途中に設けられた小さな庭が、今日の坪庭のルーツとなっています。

坪庭のルーツと歴史

「坪庭」の言葉のルーツは、平安時代に確立した寝殿造り(位の高い貴族の住宅形式)にあります。寝殿造りは母屋(寝殿)を中心にいくつかの建物でできています。その建物同士は渡り廊下でつながっていました。建物と渡り廊下の間のスペースは、四角い外空間になります。その場所を「壺」といいます。そこには桜、藤や紅葉、草花などが植栽され、石が置かれ、水が流れていました。四季と自然を感じられるように造られた「壺」は、そこに住む人たちや仕える人々を癒していたのです。この壺が坪と変化したと考えられます。平安時代の「壺」は、とても広大でしたから現在の坪庭とはスケールが違います。

鎌倉時代、室町時代には寺院に「壺」のような空間ができ、自然の風景を模した枯山水などが生れました。日本人はいつも自然に癒され生かされている。自然と共でなければ生きていけないという精神をもっています。自然を模した日本の庭文化は、どのような時代も途切れることなく受け継がれてきたのだと思います。
桃山時代には茶庭(露地)という茶室に入る前の通路に庭が作られました。千利休が確立したこの露地には茶事への気持ちを創るため、いくつかの決まりと作法があります。茶室と露地は一体となって侘びの世界を創り上げていました。侘びの心と庭づくりのエッセンスは京の町家に設けられた小さな庭へ反映されました。家の主人のセンスと教養が盛り込まれたアイディア豊かな小さな空間は「坪庭」という、今に継がれる文化を育んだのです。

白砂に石、水が入った蹲踞(つくばい)と石灯籠、飛び石に季節の草花や樹木、苔。茶道に詳しくなくても、「日本庭園」と言われて想い浮かぶ庭は皆さんだいたい共通のイメージではないでしょうか。静かで心落ち着く和の空間です。これらのものを小さな空間に絶妙に配置し、美しい景色を作っていました。


 

▲蹲踞(つくばい)            ▲石灯籠

 

▲飛び石

京の町家における坪庭の実用的な役割

京の庶民に根付いた坪庭には、観賞用ではない機能がありました。

桃山時代、京都再興ため人々は商業活動を始めました。職住一体の住宅が隙間なく建ち並びました。誰もが通り沿いに店を構えるため住居部分が間口から奥側へと長細い建物となっています。「うなぎの寝床」と言われる京の町家造りです。この構造では建物の奥まで光や風が届かず、室内が暗く湿気が溜まりやすくなるという課題がありました。そこで考え出されたのが、敷地の途中に坪庭を設けるアイデアです。坪庭は、建物の奥へ光(採光)と風(通気)を呼び込むための不可欠な装置、として機能しました。

しかし、日本人の自然と共にあるという精神は、この小さな外空間を機能性だけの場所にしませんでした。自然を縮小して描き眺めて楽しむという要素を加えていったのです。平安時代貴族たちも癒されてきた「壺」の世界観と想いに、スケールは違えど通ずるものがあります。
そして坪庭は、一つの作品のように切り取られ、今に繋がっています。現代の坪庭は、モダンなものや洋風なものなど日本庭園の要素にこだわらずたくさんのデザインがあります。住まいのイメージに合わせて創る癒しの空間となっています。


では、坪庭にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

家が明るくなる!「坪庭」を設置する5つのメリット

現代の住宅においても、坪庭を設置することで暮らしにさまざまな恩恵をもたらします。
 

1、室内が明るくなり、開放感が生まれる

京の町家の悩みを解決させた一つには、採光があります。奥まるにつれ暗くなってしまった長い住居に坪庭は、明るさをもたらしたのです。現代の家も敷地の状況で採光が確保しずらくなってしまう事もあるのではないでしょうか。そんな時は少しだけ床面積が狭くなっても坪庭を造るという選択があります。狭めたはずの屋内が明るさと開放感を得て、逆に広さを感じることができるようになります。
 

2、家全体の通気性がアップする

坪庭に面して窓を配置することで、家の中に自然な風の通り道が生まれます。気密性・断熱性の高い現代住宅ですが、外の自然な風が家の中を一巡りするのは気持ちがいいし、健康的です。日本には外の風を感じたいと思う季節がありますから。
一日のうちで一回でも、風が抜けていく時間がある。その環境を作ってくれる坪庭には、リラックスと癒しの効果がありそうです。

3、プライバシーを守りながら自然を味わえる

四季を感じられる植栽をして、水を張り石を置き苔を巡らせて、小さな空間に大自然を描くことができる坪庭。たとえ表側に大きな庭がなくても、坪庭に自然を上手く描いたら、家の中から外を味わえるとても贅沢な空間になります。基本的に坪庭は囲まれた空間ですから、視線を気にすることのないプライベート空間です。プライバシーを保ちながら、外を愉しむことができます。一日中家の中にいた日も、在宅ワークに疲れた日も、坪庭から季節の花を見て、風を感じる。陽の光を浴びて、夜は月を眺めることができます。

4、非日常の癒やし空間を演出できる

本来なら戸やカーテンを閉め切って、見えなくなってしまう事が多い夜の庭です。でも坪庭なら、いつまでもガラスの向こうに美しい自然を感じていられる。ライトアップして食事したり、お酒を飲んだり、お風呂から見えるように坪庭を配置する間取りも人気です。視線を気にせずに安全にそんな時間をたっぷり楽しめるのは、坪庭ならではです。家にいながら、料亭や旅館にいるような非日常を演出できます。

5、家族のコミュニケーションが増える

間取り次第では、坪庭の向こう側にいる家族の気配を感じやすくなります。季節ごとに変わる坪庭の表情、草花や天気の変化、遊びにきた鳥や蝶は、家族にたくさんの話題を運んできます。


視線を気にせず気軽にできる庭いじり、広すぎない坪庭での作業は長く続けられる趣味にも繋がりそうですね。家族とのDIYでつくる庭も、楽しい時間と思い出になります。


 

後悔しないために知っておきたい「坪庭」のデメリット

坪庭を取り入れる際は、事前に気を付けるべきポイント(デメリット)も把握しておくことが大切です。

建築費が上がる

坪庭のスペースをコの字型、又はロの字型に造ることで外壁が増え、窓も増えて建築のコストが上がる場合が多いです。坪庭の使い方によっても、整えるべき外構設備があるので、完全に後回しにせずに建物の建築予算に組み込んで設計する必要があります。

断熱性への対策と窓掃除の手間

坪庭に面して開口部(窓)が増えるため、窓ガラスやサッシの断熱性能(複層ガラスや樹脂サッシなど)を高める対策が欠かせません。また、ガラスの清掃箇所が増える点も考慮しておきましょう。窓のお掃除も増えますね。


1階・2階の床面積が狭くなる

家の一部を外にしてしまうと考えると、床面積が小さくなるということになります。坪庭の分、建物を外側に広げるなど工夫ができる場合は対処できるかもしれませんが、基本的には坪庭によって広く感じる明るく開放的に感じるといったメリットの方をどれだけ活かす間取りにできるのかを考えて設計することになるでしょう。また、坪庭の上は日差しを感じる空、という設定が多いかと思います。つまり床面積の縮小は2階にも影響するということになります。

適切なメンテナンスが必要になる

常に家の中から見つめる場所であるため、落ち葉の掃除や植物の剪定、苔のお手入れなどを怠ると雑多な印象になってしまいます。物置になってしまうのも要注意です。手入れの負担を減らしたい場合は、常緑樹を選ぶ、あるいはプロによる定期メンテナンスを検討するとよいでしょう。

まとめ:坪庭がつなぐ家族の心と住まいの未来

古くから日本には**「庭屋一如(ていおくいちにょ)」**という言葉があります。「住まいと庭は一体であり、調和してこそ豊かな暮らしが生まれる」という意味です。
庭と建物の調和を大切に考えることは、自然と共にくらしていかなければ生きられないという古来から日本人の心に途切れることなく残っている心情です。耐震や断熱性、気密性が求められている今日の住宅事情の中で、庭と家は切り離されてしまいがちです。また、庭というスペースが簡単に設けられない土地もあるでしょう。忙しくなった私たちの生活の中で、庭に関心を持つ時間や、そこに費やす労力は確保しずらいものになっています。そんな環境の中で、もしかしたら坪庭は、はるか時を超えて今こそ私たちの暮らしに必要な空間なのかもしれません。家族と一緒に変わっていく坪庭の植物、そこで過ごす時間の長さや考える事。手にしている飲み物さえ変わっていくのかもしれません。



でも、坪庭には光が注ぎ、雨が降り、風が吹いている。家族の思い出でも生まれるはずの坪庭。そして、坪庭の存在は変化していく家族の中で、変わらずに家族を想う場所であってくれるはずです。

平安時代の寝殿造りから続く坪庭の文化。私たち工匠が手掛ける古民家再生の現場でも、こうした先人の知恵を現代の断熱・気密技術と融合させ、住み心地の良い空間をご提案しています。

和の心が育んだ坪庭。古民家再生や新築の際に検討してみてはいかがでしょうか。


工匠は、千葉県松戸市・市川市を中心に

自然素材を活かした古民家再生・リノベーションを専門的に手掛けております。

また、お客様のこだわりを実現する注文住宅も可能です。
いつまでも丈夫で美しく、愛され続ける住宅をご提供いたします。


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